何もしていないのに肩が疼いたり、手を後に回すと肩に痛みを感じたりする場合には拘縮肩を疑います。
この拘縮肩の症状は様々で痛みの酷さも千差万別。
そのため、拘縮肩に対しての治療方法も様々な方法が用いられます。
今回はそんな拘縮肩の治療方法のひとつである「受動術」という方法をご紹介。もし、肩の痛みでお悩みの方は是非ご参照ください。
拘縮肩とは?症状や原因を解説
拘縮肩とは名前からも何となく想像がつくように、肩関節周囲の組織が硬くなっている病態。
周囲の組織とは筋肉や靭帯。そして肩を包んでいる関節包という袋のこと。
これらが硬くなることにより以下のような症状が出ることがあります。
- 何もしていなくても肩が疼く
- 夜になると肩が激しく痛む
- 髪を結ぶなどの動作で痛む
- 手を上に挙げると痛む
- 肩が思うように動かさせなくなる
拘縮肩になる原因は様々で、例えば以下のよう原因が考えられます。
- 骨折や靭帯損傷で長期間肩を動かなさなかったことによる拘縮
- 肩関節に炎症がある状態で肩を動かし過ぎたことによる拘縮
- 糖尿病などの既往
拘縮肩は肩関節を「動かさな過ぎ」ても「動かし過ぎ」ても引きこされてしまうリスクがある病態です。
動かさないタイミング・動かすタイミングは自己判断ではなかなか難しく、専門家でも見解の違いが出てくることもあるほど。
また、痛みが激しく酷くなると日常生活を過ごすこともキツくなるため1日でも早く症状を改善させるために「受動術」という治療方法が取られることがあります。
拘縮肩を改善させる「受動術」とはどんな治療法?
受動術とは「サイレントマニュピレーション」とも呼ばれ、拘縮肩の痛みを早期に取り除くことを目的とした治療法。専門的には非観血的関節受動術と呼ばれ、身体にメスを入れることなく日帰りで行える治療法です。
受動術の簡単な流れは以下のとおり。
- 肩周囲の知覚を支配している首(頸部)の神経に麻酔を掛けます。(超音波エコーを使用)
- 肩関節に麻酔が効いている状態でベッドに仰向けになります。
- 肩関節に屈曲・外転・内旋・外旋という動きをゆっくりと加え、拘縮を取り除きます。
- 三角巾を固定して帰宅。その後リハビリ通院となります。
少し専門的な表現になってしまったため、簡単にいえば麻酔を使って一次的に痛みを抑えた状況で、硬くなりきった関節周囲の組織を解したり、剝がしたりする方法。
普段は痛くて動かせない肩関節も麻酔が効いている中では動かすことが可能なため、ゆっくり動かしていくことで徐々に肩が動くように。
麻酔がきれた後には当然痛みが出てしまうことがありますが内服薬などで抑えていきます。
受動術は痛いの?手術との違いは?
受動術は麻酔を使用して行う治療法のため、治療中に痛みを感じることは殆どありません。
しかし、硬くなった肩関節を麻酔下で引き剥がすということを行っているため麻酔後に痛みが出てしまうことはあります。その場合は内服薬が処方されているため適宜内服しましょう。
また、同じ受動術という名前でも「鏡視下肩関節受動術」という治療方法があります。
こちらは拘縮肩に対して鏡視下に切離をして関節包を広げるという手術でサイレントマニュピレーションとは違い「手術」となります。
そのため日帰りというわけにはいかず入院期間は約1週間程度。
しかし、この治療方法を用いられるケースは最終段階。様々な方法を試みても拘縮肩の改善がみられない難治性の拘縮肩において鏡視下肩関節受動術が用いられることがあると覚えておく程度で良いでしょう。
まとめ
拘縮肩における治療法のひとつ「受動術」については何となくご理解頂けましたでしょうか?
拘縮肩の治療方法ひとつとっても様々な方法があります。
自分の症状に適切な治療方法を自己判断することは難しいうえに症状を悪化させてしまうケースもあるため、分からないことや迷いがある場合は専門機関への来院をおすすめします。