現在整形外科における治療法のなかでも「体外衝撃波治療」という新しい治療法が注目を集めています。
あまり聞き馴染みのない体外衝撃波治療ですが、これまでなかなか改善しなかった疾患にも一定の効果があることが徐々に知られてきています。
今回はそんな整形外科で注目を集めている体外衝撃波治療について詳しく解説していきたいと思います。
そもそも体外衝撃波とは?
衝撃波とは、音速を超えて伝わる圧力の波のことを指します。自然の中では火山爆発や落雷などの衝撃によって起こるものが衝撃波と呼ばれています。
体外衝撃波とは体外衝撃波装置内に水を蓄え、水中内で人工的に衝撃波を発生させ皮膚へ照射させます。
この際に水分を多く含む筋肉や脂肪を通過し、深部にある骨・硬い腱・腱の変性部位などにあたるとエネルギーが放出されるため奥深い部分への集中治療が可能になります。
体外衝撃波治療で最もイメージが湧きやすいものは「尿管結石」です。体内にある結石を切開手術することなく体外衝撃波治療を用いて結石を砕く治療法があります。
整形外科において腱障害などで使用される体外衝撃波は尿管結石などで使用される体外衝撃波を応用させ、出力を約10分の1程度に抑えたものになります。
体操の内村航平選手が、世界選手権直前で右足前距腓靭帯帯損傷を短期間で治癒させたいということで体外衝撃波を使用したことでも有名になりました。
体外衝撃波は痛い?
体外衝撃波は出力レベルによりますが一定の痛みを伴います。
しかし、いきなり激痛がはしるようなレベルで照射することはなく、患者様の様子を見ながら少しずつ出力レベルを上げていきます。
もちろん途中で我慢のできない痛みになれば治療を中止するといった措置をとることもあります。
痛みの感じ方は人それぞれのため、低出力でも耐えがたい痛みだと感じる方もいれば、中には殆ど痛みを感じないと口にする方もいます。
体外衝撃波はどんな疾患が適応になるの?
体外衝撃波治療の対象となる主な疾患は以下のとおりです。
- 慢性的な腱障害
- 足底筋膜炎
- アキレス腱炎
- アキレス腱付着部炎
- 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)
- 上腕骨内側上顆炎
- 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
- オスグッド
- 各腱鞘炎骨折修復異常
- 疲労骨折
- 骨折の遷延治癒
- 早期の骨壊死
- 早期の離断性骨軟骨炎
基本的には一定期間(6ヶ月)以上経っても痛みや症状が改善しない慢性痛に対して有効な治療法です。
一回の治療時間は約30分で、2.3回の繰り返しで60~80%の有効性が確認されています。
五十肩には体外衝撃波ではなく、ショックマスターを使用することが多い
五十肩や腱板炎などにフォーカスすると、実際はショックマスターを使用することが多いです。
▼体外衝撃波治療器
患部となるターゲットの大きさが卵1個分程度の局所集中型で、尿路結石の体内粉砕などに使用されます。
▼ショックマスター
いわゆる拡散型圧力器は、焦点が無く、拡散するため、ターゲットが広範囲に及び、筋・腱の治療に適しています。
ショックマスターは2~5分で5回をワンセットで提供しているところ多いです。
痛みの抑制や血流促進、組織修復などですが、個人的な印象は痛みには効き目あり。
しかし、関節の拘縮の改善にはそれだけでは不十分なので、合わせて徒手療法が必要になることがほとんど。
ショックマスターで痛みは改善したけど、リハビリが不十分で拘縮が残存するケースが多いのが現状だと思います。
ただ、腱板炎、肩関節周囲炎の痛みには基本的にはとても有効ですよ。
まとめ
体外衝撃波治療はまだまだ歴史も浅く、一般的な治療法と比較すれば認知度も低いです。
特に整形外科での導入はそこまで多くないため足底筋膜炎やアキレス腱炎などにおいて体外衝撃波治療という選択肢があることを知らない方が多いのは仕方ありません。
また効果は個人差があり確実な治療効果を保証する治療方法ではないため過度な期待は禁物です。
それでも60~80%の有効性は報告されており、特に慢性障害に対しての効果には一定の期待が持てそうなことも事実です。
体外衝撃波治療のことを少しでも知り、今の自分に必要な治療法なのかを考え、もし分からないことがあれば担当の先生に相談してみることをおすすめします。